人材関連コラム
求職者が応募先を探す中で、お金のことは重視されるポイントです。今回のコラムでは、その中から「賞与」や「昇給」についての注意点をご紹介。
たとえば「賞与」について。求人広告に表記されていれば、応募者は当然「賞与は出る」と思うでしょう。
さて、
(1)「就業規則に賞与支給に関する制度はあるが、ここ数年支給されていない」
(2)「今回出航した求人広告を見て応募し、採用された人全員に支給できるかどうかは不確定」。
この場合、賞与に関して表記はできるのでしょうか。
実は、リクルート媒体ではどちらの場合も表記はできません。
(1)の場合、たとえ就業規則にあってもしばらく賞与が出ていない=賞与があるという実態が認められません。
(2)に関してですが、求人広告に記載できる給与や待遇は基本的に全員に当てはまる内容のみ。つまり、この場合表記ができないのです。
どちらにしても、前述の通り待遇に書いてあれば「もらえるはず!」と思う読者がほとんど。無用なトラブルを避けるためにも表記に関しては慎重になるべきです。
たとえば、「うれしい報奨金」といったような表記も問題です。求職者の目に止まり応募が来るかもしれませんが、同時に過剰な期待を抱かせる恐れがあるからです。
ほかにも「ビッグな賞与」「グングン昇給」など、容易に高収入が得られると誤解を招くようなコメントも禁物。
「求人広告に書かれていた内容と違う!」といったクレームが寄せられないためにも、応募者が実態を正しく理解できるように表記してください。
転職活動中のAさんは、「3ヵ月ごとに昇給あり」と表記のある小売業の求人広告を見かけました。その他の勤務条件も合っていたので早速応募したところ、無事に採用が決定。
しかし実際は、3ヵ月ごとに個人の売上実績により「昇給査定」が行われるということが入社後に判明。
「全員ではなく目標額をクリアした人だけが昇給対象」という条件を表記されていなかったため、Aさんの他にも対象外となった人たちはクレームをつけることになりました。
上記事例の問題点は、条件つきの昇給であることを記載しなかった点。これでは応募者が「3ヶ月経つごとに自動的に昇給される」と捉える可能性は大いにあります。
後々のトラブルに発展しないためにも、条件がある場合はしっかりと記載しておきましょう。
もちろん、これは金銭面に限らず全ての勤務条件に当てはまります。
労働基準法18条では、雇用契約を結んだり継続する条件として労働者に貯蓄を義務づけたり、給与から預金や積立金を天引きする・通帳を預かるなど貯蓄を管理することを禁止しています。
労働者の自由意思に基づく委託によって貯蓄の管理をする場合も、労働者代表(労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の代表)と書面による協定を結び、労働基準監督署に届け出をしなくてはいけません。
そのほか、労働者の貯蓄を管理する場合には
・貯蓄金の管理に関する規程を定め、労働者に周知させる
・労働者の預金の直接の受入れであるときは、所定の利子をつける
・労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく返還する
などの規定もあります。
これらの規定に違反して預金の受入れを行った場合は「出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律」にも違反することとなり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または両者を併科するとされています(同法第8条第2項1号、第2条第1項)。
いかがでしたか?
昇給や賞与などは求職者の知りたい情報であることは間違いありませんが、表記の仕方を間違えるとトラブルになることもございます。求職者が誤って解釈しないように会社の実態に即した書き方をするように注意しましょう。