人材関連コラム
近年、実際の労働条件よりも良く見せかけた求人票で労働者を集めるという、 いわゆる「求人詐欺」が世間を賑わせているようです。
このため、政府内で虚偽の求人情報掲載に対する 罰則を強化しようという法改正が検討されています。
一方で、「試用期間」や「研修期間」という制度を悪用した、 詐欺的な手法で労働力を確保する行為が横行しているようです。
労働問題に詳しい佐藤宏和弁護士は次のように解説しています。
「正社員を募集する求人票への応募に対し、 会社が『試用期間』『研修期間』と称して 求人票より不利な条件での労働契約を提示することがあります。
応募者は、一定期間が過ぎれば求人票にあった労働条件で 雇ってもらえると期待して提案に同意し勤務を開始しますが、 会社側は当該期間中や期間の経過後に 本人の能力不足といった理由をつけて 求人票どおりの労働条件は出せないと通告するのです」
こうなると労働者は試用期間満了後、 求人票より不利な条件を受け入れて働き続けるか、 退職するかの二択しかありません。
本来は、労働者の能力や適性を評価するための 試用期間や研修期間が終了しても、 原則として契約社員のように労働契約が終了するわけではありません。
「試用期間が終了するまでは正社員ではない」と考えるのは、 労働者側の大きな誤解であるようです。
★結論★…「試用期間が満了しても、解雇できるわけではない」
さらに、同弁護士によると 「会社側がその労働者は能力不足であると判断したとしても、 試用期間であることを理由に好き勝手に解雇(本採用拒否)が できるわけではありません。
試用期間満了時に会社が労働者を解雇するには、 労働者が契約上必要な能力を著しく欠いていることが事後的に判明した、 自己の経歴を偽っていた、などの事情を証拠によって 客観的に明らかにしなければならないのです」 労働者は、会社側が客観的な解雇理由を裏付ける証拠を用意できない限り、 試用期間だからといって、それほど簡単に解雇されないのです。 つまり、試用期間満了後に新たな契約を一切締結しなくても、 労働者は会社に対して最初に合意した労働条件で 正社員の地位にあると主張することができるのです。
本来、労働者と使用者(会社)は対等であるべきですが、 実際は労働者を雇って賃金を払う側の会社が強い立場になりがちです。 また、労働契約の種類はさまざまで非常に複雑ですので、 労働者の抱く誤解を悪用した詐欺的な労働慣行が出てきてしまうようです。 様々な業界での人材不足も深刻でありますが、 そもそも会社と労働者との信頼関係が成立しなければ、 問題がますます膨らむ一方ともいえます。
物理的かつ精神的な行き違いが発生しないよう、 書面のやり取りとそれに準じた説明をキッチリ行うことが重要です。
★結論★…「雇用契約書など、労使間の取り決めは書面で行う」
今回のコラムにおけるポイントは、以下の2つ。
【POINT1】試用・研修の悪用による搾取が横行
【POINT2】採用確定後、両者が雇用に関する条件等をしっかり共有する
いかがでしたか?