人材関連コラム
多様な働き方が広がる中、 「副業・兼業」についての議論が盛り上がっているようです。
現状を観てみると、就業規則などで副業を禁止している企業は多いようです。
「平成 26 年度兼業・副業に係る取組み実態調査事業報告書」によると、 帝国データバンク郵送調査 4,513 社中、実に96%が 兼業・副業を「不可」としているとなっています。
とある紙面の情報からですが、 かねてから自社で副業を解禁しその効果を説いてきたサイボウズ青野慶久社長が 就労規則での「副業禁止の禁止」を提案して、 報告書にも内容が反映されているようです。
さらに、ロート製薬など大手企業の中にも副業を認めることを 公言したり推奨したりする企業が出てきているとのことでした。
政府も企業側の動きを背景に政策面でできることを議論し始め、 経産省の「雇用関係によらない働き方」に関する 研究会で副業・兼業も議論されるほか、 中小企業庁でも人材の活用策という意味で別途議論されると言われています。
ロート製薬が副業を解禁したことは上述のとおりですが、 増収増益のロート製薬が副業を導入した理由がまさに 「もっと先の成長をうむためのダイバーシティ」だと言われています。
広報・CSV推進部副部長の矢倉芳夫氏は 「今までやってきたことで業績を伸ばしていくだけでは、 今はよくても20~50年後はない。世の中がどう変わっていっているのか、 副業などを通じて視野を広げてもらえれば」とおっしゃっています。
また、この制度自体を社員の提案から ボトムアップで実現している点もユニークです。
とかく、企業が副業を認めると 「優秀な人ほど離職につながるのでは」 といった懸念がでてきそうですが、矢倉氏は 「弊社は居心地がいいということで社員がほとんど辞めない。 しかし、企業成長を考えると少しくらい居心地が悪いくらいでいい」 「優秀な層が多少出て行ったとしても、その先で組織のトップになり ロート製薬とシナジーを起こしてくれるとなれば理想的」 と強くおしゃっています。
ジャーナリストの中野円佳さんはダイバーシティ経営について、 以下4つの壁を提示しています。
(1)社会として、働き方の多様性を受け容れていくこと
(2)組織として、無意識の偏見の存在を認め、是正していくこと
(3)リーダーが、異なる意見が出てきやすい環境を作ること
(4)個人が、自分自身の中の多様な軸をはぐくむこと
とくに4つめ、個人の中の多様な経験を増やすものが、 副業や社外の活動にあたります。
この中には育児や介護、ボランティア活動など 必ずしも収入を得ることではない経験の豊かさも入ってきます。
こうした多様な活動は個人が渡り歩くスキルとして必要になってくるのと同時に、 企業がどれだけ社員にこうした経験をさせられるか、 それを引き出し生かせるかを問われてくる内容にもなっています。
最近の大手企業においては異業種合同のプログラムや NPOへの派遣などの関心が非常に高いそうです。
通言語がない場でのリーダーシップを発揮するのは 非常に骨の折れる作業となりますが、 新しいアイデアが生まれる可能性があり、 マネジメント力も格段に身につく事は予想できます。
「1つの会社に尽くしてきました」ということを評価していた時代から、 いかに多様な人材の多様な経験を受容し、伸ばし、生かしていけるかという世界に、 企業は転換していくことができるのでしょうか。
副業の解禁の今後は、企業が「会社の成長のために個人に期待」し、 社員の価値を生む働き方改革ができるのかが焦点になりそうです。
今回のコラムにおけるポイントは、以下の3つ。
【POINT1】「辞める社員がでてきてもいい」?
【POINT2】個人の中の多様性をどう高め、生かせるか
【POINT3】会社の成長=社員の働く価値
いかがでしたか?
「副業の禁止」という今までの規則をもう少し柔軟かつポジティブに捉え、 社員の職場と業務への価値観を創造させ、会社の成長へとつなげる。 そのような思考も、今後の世の流れでは必要になるでしょう。
今回の内容が少しでもご参考になれば幸いです。