人材関連コラム
2017年1月1日、「育児・介護休業法」が改定・施行されました。
そこで、今回は介護離職を低減させるべく「仕事と介護の両立支援」を拡充する動きが、大手企業を中心に広がっているという事例をご紹介したいと思います。
社員の実態調査を踏まえ、独自の制度を創設するところも少なくないようで、「介護離職ゼロ」の実現に向けた企業の取り組み事例となります。
■某生命保険会社
座学に加え実技も含む社員向け介護セミナーを実施しており、参加したコンプライアンス統括部のKさん(54)は「介護といってもいろんな状態の人がいることが分かった。自分のこととして捉えたことがなかったが、意識が変わった」と話されていました。
同社は昨年4月から、「介護に向き合う全員行動」に取り組んでいらっしゃいます。若手を含む全社員が、セミナー参加や施設でのボランティアなど介護にかかわる行動をして、上司に報告することになっています。
また、実態を見える化するため社員が身上に関する情報を登録するシステムに介護に関する欄を設けたそうで、「介護に直面する社員にとって周囲の理解が一番の支援になり、それ以外の社員にとっては介護への準備につながる。全員行動でお互いさま意識を醸成したい」と人事部輝き推進室の担当課長は話されています。
■某大手家電メーカー
40代以上の社員が7割に達する現実から一昨年12月、介護に関する社員調査を初めて実施しました。
「8割近くが介護に不安を感じている一方、何の準備もしていない人が5割いた。介護離職を防ぐには、基本的な知識を持ってもらうことが必要と感じた」と人事労政部安全衛生・福祉課の課長はおっしゃっています。
啓発から介護に直面した際の支援策までを網羅した「介護両立応援プログラム」を急ピッチで整備し、開始しました。
介護に関する基本的な知識をポータルサイトで提供することをはじめ、共済会に「介護に関する相談窓口」を常設・外部の専門業者と提携し、介護発生時の必要諸手続き代行や年間9万円までの介護費用の補助・介護融資制度など経済支援も拡充させてそうです。
「職場で自然に介護の話題が出る雰囲気づくりにも取り組む」と課長は話されています。
■某大手銀行
「50代、60代にも社内で活躍し続けてもらいたい。仕事と介護の両立に十分な支援制度とセーフティーネットを整備し、不安を取り除く」そう話されるのは、グローバル人事業務部、部長。
現行244営業日の介護休業を倍増するほか、介護目的の有給休暇の繰り越しの大幅拡充、介護離職者の再雇用などの大型施策を秋以降、順次導入する方針だそうです。
■某世界的金融サービス業(日本法人)
介護のみならず、高齢の親の生活をサポートしたいというニーズにも対応している事例で、社員の家族1人当たり、年100時間までの介護や介助の利用料を負担するそうです。
高齢化が進む日本。介護を必要とする人は増え続けると同時に、介護離職者は年間約10万人にのぼっています。
政府は「ニッポン一億総活躍プラン」で介護離職ゼロを掲げ、介護の受け皿拡充などに着手し、介護離職防止に向けた対策を行う企業に助成金を出すなど取り組みを働きかけています。
こうした流れを受けて、企業でも両立支援体制整備の動きが加速され、法定を上回る内容や独自の制度の創設が目立ってきています。
企業側の支援施策があっても、社員側の意識が伴わなければなかなかうまくいきません。
考えられる備えとしては、「介護を一人で抱え込まず、介護保険制度などの様々なサービスを利用しながら仕事との両立を図るのが基本と認識すること」で、そのためには、介護保険や会社の制度について基礎的な知識を得ておくことが重要です。
また、介護休業の活用方法も知っておくべき重要な要素です。介護休業は介護に専念するためのものではなく、要介護者が適切な介護を受けられる準備をして、仕事と介護の両立の体制を構築するための期間であり、いわば『介護準備休業』と捉えた方がスムーズに運用が行えるはずです。
今回のコラムにおけるポイント
いかがでしたか?
年代によっては、身近に感じられない方も少なくないと思います。
しかし2025年問題は確実に迫ってきていますし、介護離職者10万人という数字も現実となっています。
企業にとって貴重な人材を確保。また、社員にとってもやりがいのある仕事や職場で永く働く為であるからこそ、事前の環境整備や意識改革は必要なことだと言えるでしょう。