人材関連コラム
せっかくいい人を採用したのに、「思っていた仕事内容と違った」、「続ける自信がない」など、すぐに退職されてしまった経験はありませんか?
「長く働くといって就職したのに、すぐに辞めてしまうなんて、そんな人に賃金は払えない!」
「1日働いただけで無断欠勤されたから、給与は払わない」
お気持ちはお察ししますが、労働基準法第24条において「賃金全額払いの原則」が定められていますので、「すぐに辞めたから賃金を払わない」という理屈は通用しません。また、「約束通りに働かなければ違約金を請求する」「これだけの損害賠償金を払いなさい」という契約も法律違反となりますので、不可能となります。たとえ1日でも数時間でも、出勤して仕事をしたという事実があるならば、定められた賃金分を【全額】支払う義務があるのです。
今回は「アタリマエ」に思えますがトラブルが多い、賃金未払い・賃金マイナスに関する事例・ポイントをお伝えいたします。
退職が関係しなくとも、下記のように「給与の一部が支払われなかった!」とトラブルになったケースは存在します。
・仕事でミスをしたら、その月の給与が勝手にカットされた。
・営業ノルマを達成できなかった月の基本給が、ペナルティとしてマイナスされていた。
・「研修の間は研修手当がつく」と説明を受けていたが、研修終了後に、「その後3カ月以上勤務しないと研修手当は支給できない」と言われた。
などなど。また、退職時に「あなたの後任を採用しなければいけないので、採用できるまで求人広告代を払ってください」と言われた、というケースも存在します。
労働者が遅刻や無断欠勤をした場合に賃金を減額する規定を設けることはできますが、その額には限りがあります。もちろん、遅刻・欠勤をして働いていない時間分の給与に関して払う必要はありません。※ノーワーク、ノーペイの原則
しかし、「1時間の遅刻を3回行ったら、1日分(8時間)の賃金カット」というペナルティは、原則違法となります。なぜなら、労働基準法第91 条では、「減給は1 回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1 賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされているからです。また、「入社○日以内に辞めた場合は、罰金として○万円を請求します」といった規定は、労働基準法第16 条の賠償予定の禁止に違反するため、無効です。
「すぐに辞めてしまった人に賃金を払いたくない」という気持ちが起きるのは当然のことかと思います。しかし、やる気になれない人や十分な力を発揮しない人に対して給与を支払い続けることの方が損害は大きいはずです。むしろ、1日でも2日でもその人が働いた分だけきちんと給与を支払って退職してもらい、その人以上に力のある人を採用するなどの判断が大切です。
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